GEORGE LAZENBY
ジョージ・レイゼンビー


  2代目ジェームズ・ボンド。
  1969年 『女王陛下の007』の計1作に出演した。
  

 そもそも、ショーン・コネリーの代わりを務めるなど、そんな簡単な事ではなかった。
 ジョージ・レーゼンビーは俳優ではなく、モデルだった。そんな彼は、コネリーがボンド役を
降りた事を知ってから、何とかしてボンド役を獲得しようと努力したらしい。なけなしの金をはたいて、
コネリーと同じ店でオーダーメイドのスーツを作り、ローレックスの時計を買った。その直後、コネリー
と同じような髪型にしようと入ったヘア・サロンで偶然、製作者のブロッコリに出会ったという。
 彼が作り上げていたイメージは、ブロッコリの印象に強く響き、彼はスクリーンテストを合格し
ついにボンド役を手に入れた。ここまでを聞くと、努力と根性の夢物語に思えるが、彼の失敗は
その後の動向にある。分別のないこの男は、“ボンド役を目指したのは金と女のためだ”と
マスコミに語り評判を落とし、さらには“プロデューサーに君は利用されているんだ”という友人の
言葉を聞いて、将来のボンドも全て降りてしまった。まだスターではないレーゼンビーを利用する
はずもないのに、結局わけのわからない世界に行ってしまうことになる。まあそれは、我々007
ファンにとっては良かったのかもしれない。個人的には、あまり魅力的なボンドには見えないからだ。
 スタッフの不安が映画の冒頭にも現れている。MやQといったこれまでの常連の姿をまず出す
ことで、“これは007映画ですよ”という説明を入れている。それほど、彼自身の存在感は薄い
ものがあった。
 このボンドの特徴は、機敏な動きに尽きる。タフさや冷静さは感じられないが、妙に機敏な
動きだけが目立った気がする。殴り合いのシーンのテストで抜擢されたと言われるぐらいアクション
シーンの切れは良い。そこを強調するために、ボンドが敵を殴るたびに“バシッ”とか音が鳴る
ぐらいだ。どうにも興ざめだが。
 作品自体の良さに救われて、何とかボンドを演じきったが、やはりあまり好みではない。
 ボンド役を降りてくれて、本当に良かったといったところか。